2025年3月 特集

離婚を考える前に知っておきたい

フロリダ州の離婚に関する法律

パート3

タンパベイエリアでFamily Lawの弁護士をなさっている
ケイト上田さんのご投稿が続きます。
お忙しい中、キーライムのために時間をさいて
ご寄稿くださり、
有難うございます。


 * * * * *

養育費(Child Support)



フロリダ州では、
両親それぞれの収入とタイムシェアに応じて
既定のガイドラインに沿って
養育費の毎月の支払額が決められます。

養育費は子供の権利ととらえられますので、
払う側と受取る側が交渉して、
金額を低くすることはできません。

また養育費は 
一方が負担した特別費用を
毎月の養育費から相殺することはできませんので 
子供の旅行費用、学費、課外活動にかかる費用などは、
夫婦でどちらがどれだけ負担するか、
事前に決めておく必要があります。

また、養育費と子供との面接権とは別物で、
養育費の支払いが滞っていても、
受け取る側はそれを理由に
子供と相手が面会することを拒否したり妨害することはできません。

離婚手当・扶養料(Alimony)



アリモニー(扶養料)は、
離婚後の配偶者の経済的ニーズに応じて支払われる経済的支援で、
色々な種類のアリモニーがあります。

アリモニーは、
日本の慰謝料のように不正行為に対する罰ではなく、
離婚後の配偶者の生活費をサポートするために 
一定期間支払われるもので、
受け取る側のニーズと支払う側の支払い能力が決め手となります。

結婚中も仕事を継続していた方なら
離婚後も生活はまわっていくでしょうが、
子育てなどでキャリアにギャップがあり、
すぐに仕事が見つからない場合は
資格を取得する必要もあるかもしれません。

その間、期間限定の扶養料を要求できます。

結婚期間中、専業主婦で就労経験が少ない方は、
アリモニーをめぐって裁判が長引く傾向にあります。
裁判が長引けば弁護士費用も高くなります。
ですので、必要な扶養が短期なら、
弁護士費用を考慮すると、
早期解決するほうがお得です。

財産分与(Equitable Distribution)



離婚の際には夫婦の財産分与が必要になります。

うちは、お財布が別だから
分ける必要がないと誤解されている方もいますが、
結婚期間中に得た財産は、
誰の名義であるか、どちらの原資で得たものか、
利用しているのは誰かに関係なく、
すべてMarital Assetとされて分割対象となります。

たとえば、夫の原資で購入したフェラーリが夫の名義であっても、
結婚期間中に購入したものであれば、
分割の対象となります。
分割の割合は、基本的には半分ずつですが、例外もあります。

結婚期間中、夫婦が得た財産は、
どちらがより多く稼いだかではなく、
合計がMarital Asset とされ、
夫婦の負債の合計は、
どちらの借金であってもMarital Debtとされて、
両方が分割の対象となります。

離婚の際の勝ち組は、
稼ぎがないわりに借金を作り、
相手に返済を半分押付けるダメンズ、
もしくはダメガールズ?でしょうか。

結婚前から所有していた財産は
分割対象外となりますが
多くの例外規則がありますので注意が必要です。

例えば結婚前からのIRA, 401Kやペンションのうち、
結婚期間中に contributeした金額や
投資利益は分割の対象となります。

最近、ビットコインなどの仮想通貨が非常に好調ですが、
他の資産同様、婚姻期間中に投資した部分は分割対象となります。
仮想通貨はアプリでの運用が原則ですので、
自分が投資していなくても、
相手の利用しているアプリの名称を知っておくといいでしょう。

離婚手続中、当事者は弁護士を通して資産開示義務がありますが、
すんなりと開示してくれる方は富裕層はもちろん、
一般の方でも多くないので、
事前情報があると弁護士も仕事がしやすいです。

特に仮想通貨は匿名性が高いので、
本来ならば共有資産であるお金を一方が暗号通貨にし、
開示要求に応じなければ分割が困難になります。

このように、離婚手続はドライでハードな部分と、
ソフトな部分を持っています。

係争が長引きそうであれば、
裁判所に申し立て、
婚姻解消のみの判決を先にもらっておくこともできます。

このやり方をバイフォケートと呼び、
籍だけ先に抜いて、
合意できない部分だけ、のちの裁判で争います。

弁護士費用(Attorney’s Fee)



弁護士費用が多額で、支払いが困難な場合、
相手に支払い能力があると裁判所が判断した場合、
裁判所が相手に対して一部負担を命ずることがあります。

これは申し立てた側が、
自分の弁護士費用がreasonableであることと
相手側の支払い能力の2つを証明出来ればですが、
リーズナブルという概念が曖昧なため、
結果はケースバイケースであることが多く、
経験豊富な弁護士でも
裁判所の判断を事前予測するのは難しいです。

ですので、あくまでも弁護士費用は
自分で100%払うという心の準備は必要です。

私が夫側の弁護士として担当した案件で、
10年以上も離婚係争している夫婦がいました。

彼自身、辣腕弁護士で仕事に邁進し、
事務所の利益は右肩あがり、
妻と別居中に新しい相手との間に子供もでき、
仕事も家庭も順風満帆であるのに対し、
妻は成人した子供達や友人とも距離が出来たようで、
十分すぎるほどのテンポラリーサポートで
贅沢に暮らしていたにもかかわらず、
法廷で会う度に枯れていく印象を受けました。

昔と違い、今は離婚が当たり前の時代ですので、
係争中も柔軟に対応して早期解決を目指し、
充実した毎日を過ごしてください。

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ケイトさん、ご投稿ありがとうございます‼️

ご投稿:上田ケイトさん

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