特集:国際離婚その3

少し間があきましたが、201210月、11月に引き続き国際離婚の手続きについて、特に子供をめぐるハーグ国際協定について外務省のサイトをまとめてレポートいたします。


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ハーグ条約の背景


国際結婚の急増に伴い、残念乍ら、国際離婚も増加しました。結婚生活が破綻した際,一方の親がもう一方の親の同意無しに,子を自分の母国へ連れ出し,もう片方の親に面会させないといった「子の連れ去り」が問題視されるようになり、更に,外国で離婚し生活している日本人が,日本がハーグ条約を未締結である為、子と共に日本へ一時帰国することができないような問題も生じています。現在の状態では、もし、アメリカから日本に無断に子どもを連れ帰った場合、アメリカだけでなくハーグ国際協定のCivil
Aspects of International Child Abduction を批准している国には入れば、誘拐罪で捕まる事も有り得ます。

1970年代頃から,国際離婚に伴い、一方の親による子の連れ去りや監護権をめぐる国際裁判管轄の問題を解決する必要性があるとの認識が生まれ、1976年,国際私法の統一を目的とする「ハーグ国際私法会議(HCCH」は,この問題について検討することを決定し,1980年に「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約)」が作成されました。20121月現在,世界87か国がこのハーグ条約を締結しています(G8諸国中,未締結であるのは日本のみです)


子の利益を守る「ハーグ条約」とは?


国境を越えた子の連れ去りは,子にとって、生活基盤の変化、一方の親との別離、異なる言語文化環境への適応等,有害な影響を与える可能性があります。ハーグ条約は,そのような悪影響から子を守るために,原則として元の居住国に子を迅速に返還するための国際協力の仕組みや国境を越えた親子の面会交流の実現の為の協力について定めています。

(1)子を元の居住国へ返還することが原則

ハーグ条約は,監護権の侵害を伴う国境を越えた子の連れ去り等は子の利益に反すること,どちらの親が子の世話をすべきかの判断は子の元の居住国で行われるべきであることなどの考慮から,まずは原則として子を元の居住国へ返還することを義務付けています。

2)親子の面会交流の機会を確保


国境を越えて所在する親と子が面会できない状況を改善し,親子の面会交流の機会を確保することは,子の利益につながると考えられることから,ハーグ条約は,親子が面会交流できる機会を得られるよう締約国が支援をすることを定めています。

中央当局による援助と子の返還手続について


(1)中央当局による援助
子を連れ去られた親は,自国の中央当局や子が現に所在する国(連れ去られた先の国)の中央当局を含む締約国の中央当局に対し,子の返還に関する援助の申請を行うことができるほか,子との接触(面会交流)に関する援助の申請を行う事が可能。

(2)子の返還手続
双方の間で話し合いがつかない場合,裁判所が原則として子を元の居住国へ返還を命ずることになりまる。但し,裁判所は,以下に該当する場合には,子の返還を拒否することができます。

1.                    
.連れ去りから1年以上経過した後に裁判所への申立てがされ,子が新たな環境に適応している場合。

2.                    
.申請者が事前の同意又は事後の黙認をしていた場合。

3.                    
.返還により子が心身に害悪を受け,又は他の耐え難い状態に置かれることとなる重大な危険がある場合。

4.                    
.子が返還を拒み,かつ当該子が意見を考慮するに十分な年齢・成熟度に達している場合。

日本が条約を締結する意義


之まで日本から外国に子を連れ去られた日本人の親は,異なる法律,文化の壁を乗り越え,自力で相手と子の居所を探し出し,外国の裁判所に子の返還を訴えなければなりませんでした。また,日本がハーグ条約を未締結である現状においては,外国で離婚し生活している日本人が,子と共に一時帰国する場合,外国の裁判所等において子と共に日本へ一時帰国することが許可されないといった問題も発生していました。

1)中央当局を通じた国際協力の仕組みを通じ,相手国から子を連れ戻すための手続や親子の面会交流の機会の確保の為の手続が可能になる。

2)子が日本から不法に連れ去られた場合又は子を日本に不法に連れ去った場合,元の居住国に子を返還することで,色々な面を十分に考慮して,子の監護についての判断を行うことが可能になる。

3)異なる国に所在する親子が面会できる機会を確保することが可能になる。

4)子を不法に連れ去った場合に原則返還しなくてはならないという条約の原則が広く周知されることにより,子の連れ去りの発生を抑制する効果が期待される。

5)外国で離婚し生活している日本人が,日本がハーグ条約を未締結であることを理由に子と共に日本への一時帰国を制限されている状況が改善され得る。


子への影響を考慮し返還しないケースも

一方,日本国内においては,家庭内暴力(DV)から子や自らを守るために子と共に帰国したにもかかわらず,子が元の居住国に戻されることに対する懸念などから、ハーグ条約を締結することに慎重な立場も見られる。ハーグ条約は,そのような懸念に対してもちろん無関心ではありません。例外規定の詳細については,前述の(2)ア.~エ.をご覧下さい)

 

いずれにしても、日本政府は、国民が納得できる形でのハーグ条約の締結を目指していく考えだそうです。詳細はサイトをご覧ください。

 

参考サイト:

 

http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/wakaru/topics/vol82/index.html

 

 

 

 

 

 

 

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