特集 1:メディケア(公的高齢者医療保険)

その1:メディケアの申請と選び方について

By 河野 圭子 ノースキャロライナ州保険部認定SHIIP
Counselor、アメリカ病院経営士会認定病院経営士

 皆さん、こんにちは。メディケアの話題は20011月号、20088月号に続いて、今回は3回目となります。私ごとですが、ノースキャロライナ州保険部の認定を取得してボランティアでメディケア相談員(NC州はSHIIP
Counselor, FL州はSHINE Counselor)を始めました。メディケアの情報は氾濫して混乱してしまいますよね。そこで、これから数回に分けてメディケアの基礎、申請方法、選び方などについてお届けしたいと思います。


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~歴史から学ぶメディケア~

 もともとアメリカの医療は、自由診療の自費払いから始まって、後に民間医療保険が登場しました。アメリカ以外の先進国は、公的医療保険制度を確立しましたが、資本主義のアメリカは医療保険も民間任せとなったようです。その結果、多くのアメリカの高齢者は、長い間、高齢による高額治療費のリスクを理由に民間医療保険に加入できなかったのです。低所得者は、保険料が払えないので民間医療保険に加入できません。こうして高齢者と低所得者の無保険が社会問題に発展していきました。

 そこで、1965年にジョンソン大統領は、この問題を解決するためにソーシャル・セキュリティー法の改正法案(別名メディケア・メディケイド法案)に署名し、メディケア(Medicare)65歳以上の高齢者ための公的保険、メディケイド(Medicaid)を低所得貧困者の公的保険として施行されました。メディケア申請は、連邦ソーシャル・セキュリティーのオフィスやHPから手続きするのは、このような理由があるのです。次にメディケアに絞って話を進めていきます。

 メディケア開始当初は、連邦政府が運営するオリジナル・メディケアの1種類だけでした。オリジナル・メディケアに含まれるのは、パートA(病院やスキルド・ナーシングの入院給付)とパートB(ドクター・オフィスや外来治療給付)です。あれ?お薬の外来処方箋給付がない!そうなんです。開始当初はなかったのです。詳しい説明は後にします。

この時代に、メディケアの自己負担分をカバーするためのメディ・ギャップやメディケア・サプリメントと呼ばれる任意に加入できる民間保険も買えるようになりました。メディケアが支払わないギャップ(自己負担)をカバーするサプリメント(補助的)な保険と考えるとわかりやすいです。

 1997年、連邦政府は、メディケア運営費削減のために、メディケアに民間医療保険会社の参加を認め、民間型メディケアが誕生しました。このメディケアは、メディケア・プラス・チョイス(Medicare
+Choice)やチョイスのCをとって、パートCとも呼ばれるようになりました。しかし高齢者は、チョイス(Choice)のCから、新たな給付が選択できるのだろうかなどパートCの名称に混乱しました。そこで、民間型メディケアの呼び名はメディケア・アドバンテージに改名されました。これに対して、連邦政府型メディケアは、オリジナル・メディケアとして区別されるようになりました。

 オリジナル・メディケア(連邦政府型)とメディケア・アドバンテージ(民間型)の大きな違いは、オリジナル・メディケアは全米ほとんどの医療機関に自由に掛かれる日本の医療保険のような保険です。メディケア・アドバンテージは、一般の民間医療保険がメディケアになったような保険なので民間保険特有の制限がついています。

 2006年、メディケアに待望の外来処方箋薬給付が開始されました。これは、パートD呼ばれ、DrugのDのように覚えやすいです。パートDは、全て民間保険会社が運営し、オリジナル・メディケアとメディケア・アドバンテージ(→既に含まれている場合もあります)に組み合わせます。こうしてメディケアは、現在のように官と民がごっちゃ混ぜになった保険になりました。

 因みに、Medicare.govからタンパ(郵便番号33601)で検索すると、メディケア・アドバンテージの保険数が44種類、パートD外来処方箋保険は27種類あります。そして、保険名もいろいろで、・・クラシック・プラン、・・セーバー・プラン、・・リワード・プランとか、保険らしからぬ名前もあります。だから、メディケア相談で「私は、一体どんなメディケアに加入しているのでしょうか?」という相談も受けます。


~メディケアの基礎を抑えましょう~

 メディケアは、公的高齢者医療保険なのに、その保険のなかにパートAの病院保険(Hospital
Insurance)とパートBの医療保険(Medical Insurance)が含まれて、、保険の保険?など混乱してしまいませんか。そこで、次のように考えると、わかりやすいです。

 

メディケア⇒メディケア保険(オリジナル・メディケア保険、メディケア・)

パートAの入院保険⇒入院をカバー

パートBの医療保険⇒医師の診療と外来治療をカバー

パートDの外来処方箋プラン⇒CVSやウオールグリーンのお薬をカバー

メディケアは、オリジナル・メディケア(連邦政府型)とメディケア・アドバンテージ(民間保険型)2種類があります。メディケア受給者は、いずれかを選びます。

 オリジナル・メディケアは、連邦政府型メディケアであり、ほとんどの全米の医師や医療機関に掛かれます。パートAとパートBからなります。パートDは、別途購入します。自己負担分を支払ってくれるメディギャップ、メディケア・サプリメント(加入時期の制限有り、詳しくは後述)に任意で加入できます。

メディケア・アドバンテージは、民間型メディケアであり民間保険のメディケア版のような保険です。別名メディケア・プラス・チョイス、パートCとも呼ばれています。ネットワークプロバイダー内の制限や、高額な検査治療の事前許可(Pre-certification,
Approval)などが必要です。ほとんどの保険に、パートA,パートB,パートDの3つが含まれています。メディギャップ、メディケア・サプリメントは付けられません。メディケア・アドバンテージの中には、オリジナル・メディケアがカバーしない歯科治療費補助、検眼、コンタクトレンズや眼鏡の給付補助、補聴器、フィットネスジムなどがついています。但し、補助金額や給付内容は十分でないこともありますので、よく確認して選んでください。


5月号に続きます)


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