永住権をいつ放棄されるかについて、
今回は3つの側面から考えたいと思います。
1. 永住権放棄のプロセス日
永住権の放棄は、I-407の書類に記入・署名・日付を付けて、
自身のグリーンカードを同封して、日本から送付します。
ここでやっかいなのが、
いつ永住権を放棄したのを米国政府が認めてくれたのかが、
米国政府の通知でしかわからない点です。
以前のUSCISのWebsiteには、
送付してから30日から60日と記載されていたのですが、
現在は見当たりません。
コロナの影響を受けているかもしれません。
米国政府のプロセスとしては、I-407の受領後に、
Eメールでプロセスされたことを連絡してくれます。
そしてその後に正式な書類として
I-797Cがあなたの住所に郵送されてきます。
EメールにもI-797Cにもプロセスされた日付が記載されていますので、
この日が正式に永住権を放棄した日になります。
筆者の知っている範囲では、
Eメールが届かない人もおりましたし、
I-797Cが届かないで大変心配される人もおりました。
しかし、問い合わせもできます。
もしお困りの方がいたら、
コンタクトセンターがあり、
電話も受け付けてくれるようです。
通常、このプロセスされた日が翌年になると、
税務申告をもう一年余計に作成しないといけない
ことになりますので、注意しましょう。
つまり年の終わりごろに出すと、プロセスされた日が翌年になります。
最後に、税務上では、I-407の発送日
つまりPost-mark日を放棄日とするポジションも取ることが可能です。
こちらはお使いの会計士とよくご相談してください。
2. 税務申告上の税率の話
通常、放棄をされる前の年までは多くの人が、
夫婦合算申告を行っています。
夫婦合算申告は、適用されるブラケット(所得税率区分)
と呼ばれる各税率の対象枠の金額が他の申告身分と比較して高く、
非常に有利な税率になっています。
もちろん標準控除と呼ばれる控除も夫婦で取ることができます。
しかし、放棄の年には、
通常この申告方式をとることができません。
夫婦個別申告という名称で、
夫婦別々に1040NR-dual status (二重身分)の税務申告を行います。
二重身分とは、
米国居住者と米国非居住者の身分の二つを
一年の期間内で持つ意味の二重身分です。
この申告形態ですと、二つの税務申告を作成する手間に加えて、
配偶者の一人が所得が高い場合は、税率が非常に不利になり、
高額の所得税を支払う結果になりかねないリスクを秘めています。
それは前述の所得税率区分が合算申告と個別申告で違うからです。
昨年までと同額の納税額になるとは決して予想せずに、
税額予想をしてみましょう。
この夫婦個別申告をされる際に、
一年のどの時点で永住権を放棄するかも、
税額を決定する重要な要素になります。
それは米国の税率が累進税率になっているからです。
年の最初に放棄された人は、
所得を稼いでいる期間が短いわけですから、低い税率を享受できます。
逆に年の終わりに放棄する人は、
最高で37%のブラケットでの課税もされる場合があります。
つまり、一般的に言いますと、毎月一定額の所得がある方は、
できるだけ年の最初に永住権を放棄されると米国税務上有利になります。
次に夫婦別々の年に永住権の放棄をされる場合もあると思います。
ホームメーカーである配偶者が最初に永住権を放棄して、
もうひとりの配偶者が翌年、
あるいはそれ以降に放棄をされるケースも可能です。
こちらは会計士によくご相談ください。
3. 放棄年での日本での課税
多くの人が見落とす点ですが、
日本に戻っても永住権の放棄が終了しない場合は、
まだ米国居住者である点です。
つまり図にあるように、
日本の居住者と米国の居住者という身分を持つ期間が存在します。
このオーバーラップする期間に資産の処分をすると、
両国で課税されるリスクが発生します。
重要なのは、オーバーラップの前、
あるいは、永住権の放棄をする前の年までに、
資産の処分をしてしまうことです。
言うまでもないことですが、放棄年は、日本の課税も発生しますので、
日本に戻る前に日本の会計士・税理士と
よくご相談されることをお勧めいたします。
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ご投稿:藤本光Koh 様