2021年10月号特集: クロスボーダーライフをサポートする

共有名義の資産をアメリカに残すな
6月号より4か月に渡って掲載させて頂きました
日米間のクロスボーダーにおける情報に引き続き、
シカゴにお住いの藤本光氏より再ご寄稿を頂戴しました。
10月より4回に渡って掲載させて頂きます。
いずれも専門家としての貴重な情報で、本当に有難く思います。
藤本さん、お忙しい所を重ねてのご寄稿有難うございました。

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多くの方が、子供さんと共有名義の資産をアメリカに持ちます。
例えば、コンドミニアムを息子さんにあげたいので、
共同名義にする。
投資や、銀行口座を息子さんと共同名義にする。良く聞く話です。
共同名義の資産を残されたままで、日本に帰国されます。

共同名義つまりJoint Accountとは、
一人の所有者が亡くなっても、
もう一人の所有者にも資産の所有権がありますので、
遺産検認作業(Probate)を通らなくて済む仕組みであり、
一見良くできているように思えます。

しかし、亡くなられた方が米国非居住者の場合は、
状況が大きく変わります。
これだけの時間がかかるのだという点を
理解してもらいたいと思います。

今回は、この点に関してご説明します。


1. 資産が6万ドル以上ある場合

米国に残してきた資産が6万ドル以上あり、
本人が死亡した場合は、
遺産税の申告の義務があります。
6万ドルは、米国非居住者の非課税枠です。

Form 706NAをファイルして、
もし遺産税の支払いがある場合は、
IRSに支払いを済ませます。

するとIRSのWebsiteには6ケ月から9ケ月で、
Form 5173と呼ばれるFederal Transfer Certificateが
発行されると書かれています。

このフォームが
非居住者が正しく納税義務を果たしたという証明であり、
このフォームを資産の
管理人などが、金融機関などに送ることで、
初めて金融機関は保管されている
現金、投資などを相続を受ける人に所有権を移します。

このフォームがなくて、資産を移動させて、
遺産税の負債が生じたときに、
金融機関に負債を支払う責任が生ずるリスクがあるからです。

Form 706NAは
本人が死亡してから9ケ月以内に
ファイルしないといけない税務書類です。

そして、Form 5173が届くまでに、
さらに数か月かかります。

現在はコロナの影響で
IRS自体の動きがとても遅くなっていますので、
一年くらいかかるかもしれません。

そうしますと、
ご本人が亡くなってから2年くらい経たないと
資産の移動ができないということなのです。

大変長い期間になってしまいますね。
ご本人は
Joint口座だから簡単だろうと思われていたかもしれませんが、
これが、実は大変なプロセスになってしまうのです。

2)資産が6万ドルない場合

資産が6万ドルない場合は、
706NAの提出は求められません。
そのかわり必要書類をIRSに提出することで、
Form 5173を受け取ります。

必要書類とは、故人の遺言であったり、
相続税の申告書、死亡証明書などです。

これらをIRSに提出することで、
Form 5173を受け取ることができて、
資産の移動が初めてできるわけです。

Form 5173がプロセスされる期間は数か月で変わりません。

3)煩雑な処理を避けるために

どのようにしたら、
このような事態を避けることができるのでしょうか?

帰国前に子供たちに資産を贈与をしてしまうのも
ひとつの方法です。

正確に書きますと、帰国される年の前の年、
つまり、通年アメリカの居住者ある年にされると、
米国居住者としての
生涯非課税金額の制度
(2021年では、$11.7ミリオン)を利用できます。

ただし、贈与の金額が1万5千ドルを超えた場合は、
贈与税の申告書をファイルしないといけません。

あるいは、トラストを作成して、
将来子供たちが資産を受け取れる仕組みを
作っておくのも一案です。

こちらはトラストを専門にする弁護士にご相談ください。

ご自身の財産ではなく、
アメリカにあるトラストが持つ資産であれば、
簡単に資産を動かすことができると思いますし、
それが、トラストの目的でもあります。

4)最後に

この記事は、
共有名義を持つことのリスクを説明するために書きました。
共有名義でなくとも、
米国非居住者の資産を他人に移動する場合は、
Form 5173 が必要になると考えられて
行動されるのが安全だと思います。

また金融機関や、不動産業者に、
自分が亡くなったときの手続きをしっかり聞いておき、
その場合の手順を家族に連絡しておくことも
大変有効な行動だと思います。

こちらも忘れないでいただきたいと思います。

CDHでは米国在住の個人の税務申告作成のサービスを行う傍ら、
これらの人たちのさまざまな問題点、疑問点を解決、
説明すべく日々努力しております。

またこれらの人たちが抱える問題は日米の税法をはじめ、
移民法、生命保険、リタイアメントのルールなど
複雑、多岐にわたります。

この記事は複雑な税法や、
複雑な規制をできるだけ簡単にポイントだけを
理解してもらう目的でお伝えしています。
したがって例外もたくさんあります。

実際にアクションを取る場合は、
必ず税務・法務などの専門家と相談をしてください。

なおこの記事に関するご質問はお気軽に藤本光まで。
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1 https://www.irs.gov/businesses/small-businesses-self-employed/transfer-certificate-filing-requirements-for-the-estates-of-nonresidents-not-citizens-of-the-united-states

2 https://www.irs.gov/businesses/small-businesses-self-employed/transfer-certificate-filing-requirements-for-the-estates-of-nonresidents-not-citizens-of-the-united-states

11月号でも藤本さんご投稿の記事を掲載させていただきます。
どうぞお楽しみに!

ご投稿: 藤本光 様

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