2019年5月号特集:タンパベイに防災は必要?(その2)

現在タンパベイエリアに9月から約9か月間の予定で研究留学をしている大津山です! 

先月号に続いて、今月は地域や家庭での防災の必要性についてお話したいと思います!


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なぜそもそも地域で防災が必要なのでしょうか?  

地域防災の重要性指摘されたのは阪神大震災でした。 
先月号の表でも示したように、
阪神大震災は伊勢湾台風以来の激甚災害となり、
多くの命を
奪いました。 

下の図は阪神大震災の死者数の分布と家屋倒壊から
誰に助けられたかを示しています。 
地震や津波では逃げ遅れによる
高齢者の死者が多くなる傾向にありますが、
注目すべきは
20-24歳の死者数が高くなっている点です。 
家屋の倒壊から救出された
35千人のうち
77%が近隣住民によって助けられています。 
地域とのつながりが薄かった学生は

近隣住民が彼らの存在を知らず、死亡率を高めたと言われています

1:  参照 ー 内閣府防災 平成22年度  「ぼうさい」


大津山さん1.jpg

大津山さん2 (547x522).jpg東日本大震災の経験以降、地域での防災を促進するため、

自主防災組織の推進を取り組むようになりました。
なぜならば激甚災害の場合は警察、
消防士や
消防団だけではどうしても間に合わず、
むしろ助けに来られないからです。 

いわゆる「公助の限界」をいかに地域という
「共助」で乗り越えていくのかが課題となっています。 
そのため自治会や地域ボランティア団体を軸に
した自主防災組織の促進が、
東日本大震災以降進んでいます。


ではアメリカにおける地域の防災は
どのような構造になっている
でしょうか。 

まず一番に思いつくのが 
Federal Emergency Management Agency (FEMA) ではないでしょうか。

FEMA
はその名のごとく連邦政府の危機管理部局であり、
災害時には郡や市行政
ともに応急対応、復旧復興活動を行います。
ではもっと身近な規模、町内レベルではどうでしょう。

Community Emergency Response Team (CERT) 
聞いたことがあるでしょうか。 

2012
年頃から始まったCERT
24時間のトレーニングを受ければ、
誰でもメンバーになれる
地域ボランティア危機管理組織です。 

CERT
は地域で異常事態
(自然災害だけではなく銃乱射やテロなどの多数の死傷者が発生する事象)が発生した際、
参集が呼びかけられます。
もちろんCERTメンバーは消防隊や警察と違い、
あくまでもボランティアの範疇ですので、
プロの
First Respondersのサポートといった位置づけになります。

私もこの春CERTのトレーニングを受け資格を取得しました。
トレーニングは通常各郡で実施されますが、
スケジュールの関係で、
私はヒルスボロウ郡及びマナティー郡の両方に参加しました。 
マナティー郡は
2年前のハリケーン・イルマでも被害があったことから
多くの市民が参加していましたが、
残念ながら
ヒルスボロウ郡は数名の参加に留まっていました。 

全米でもまだCERTの浸透率は低く認知度も高くないのが現状です。
地域の防災促進が
FEMAの今後の目標にもなっていますが、
地域住民で守るという考え方がこれからどれだけ浸透していくか?が、
本質的な課題となるでしょう。

では家庭ではどんな準備ができるのでしょうか。 

一般的には避難の準備や台風への備えとして
水や食料の確保が必要だと
言われています。 
しかしながら近年では、
もうひとつ進んだ準備の必要性が指摘されています。 
それは避難のその後、災害からの復旧・復興の事前検討です。 

万が一台風で家屋を失った時にどのような状況になるのか、
保険に加入をしていても
その調査及び支払いには長期間を要するため、
その間どこに
住むのか、
保険の支払い適用が可能だとしても、
州や郡の建築基準が変わり、
再建に必要な資金は足りなくなるのでは

いつから家を建てることが出来るのか、
そもそも同じ場所に住まい続けるのか、
これら重要な判断が求められますが、
必要な
情報(保険適用や再建の法的可否)がいつ届くかも分かりません。

お子さんがいる家庭では、
小学校の閉鎖等で勉学に支障をきたすため、
疎開や引っ越しをする家庭も多くなります。 
実際
昨年
10月にフロリダ西部を襲ったハリケーン・マイケル被災地では
小学生が減ったことから閉鎖した小学校もあります。

自然災害がいつ起こるかわからないし、

それは運次第だから考える必要はないと言う人もいるかもしれません。
でも、残念
ながら、前号でも述べたように、
自然災害の増加激甚化は
事実です。 

仮設住宅での環境変化による体調悪化、
復興住宅での孤独死、
先の見えない住宅再建。
インフルエンザや疾病に対しては
予防接種をするのに
自然災害は全て運に任せて良いのでしょうか。
できる事前策として、万が一の時にどこに逃げ、
どこに住まうのかを
家族で話をする機会を設けてもいいのではと思います。

最後に、ある研究者が2014年に長野県で発生した

地震の被災後現場に入ったところ、通常の被災地とは違い、
とても被災者たちが明るいことに気がつきました。  
一番の違いは、人を失わないこと、
人が死なないことが、
明るい復興にあると指摘しています。

災害で死者をゼロにすることは難しいことかもしれませんが、
本当は生きたかったが生きら
れなかった人の為にも、生き残った人の責任はあるように思います。

 阪神大震災で私が失った
クラスメイトは、
「はるかのひまわり」となって、世界に広がって
います。 
生き残った責任があるとすれば、
それを可能な限り
全うし、
次なる災害の被害を減らすことが責任なのではと
思います。


はるかのひまわり.jpg

写真 Copyright: NPO 法人阪神大震災 1.17 希望の灯り
http://117kibounoakari.sakura.ne.jp/newpage/?page_id=175



投稿: 大津山堅介さん (京都大学防災研究所 博士後期課程)

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