現在タンパベイエリアに9月から約9か月間の予定で研究留学をしている大津山です!
先月号に続いて、今月は地域や家庭での防災の必要性についてお話したいと思います!
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なぜそもそも地域で防災が必要なのでしょうか?
地域防災の重要性が指摘されたのは阪神大震災でした。
先月号の表でも示したように、
阪神大震災は伊勢湾台風以来の激甚災害となり、
多くの命を奪いました。
下の図は阪神大震災の死者数の分布と家屋倒壊から
誰に助けられたかを示しています。
地震や津波では逃げ遅れによる高齢者の死者が多くなる傾向にありますが、
注目すべきは20-24歳の死者数が高くなっている点です。
家屋の倒壊から救出された約3万5千人のうち、
77%が近隣住民によって助けられています。
地域とのつながりが薄かった学生は、
近隣住民が彼らの存在を知らず、死亡率を高めたと言われています※1。
※1: 参照 ー 内閣府防災 平成22年度 「ぼうさい」
なぜならば激甚災害の場合は警察、
消防士や消防団だけではどうしても間に合わず、
むしろ助けに来られないからです。
いわゆる
「公助の限界」をいかに地域という「共助」で乗り越えていくのかが課題となっています。
そのため自治会や地域ボランティア団体を軸にした自主防災組織の促進が、
東日本大震災以降進んでいます。
ではアメリカにおける地域の防災は
どのような構造になっているでしょうか。
まず一番に思いつくのが
Federal Emergency Management Agency (FEMA) ではないでしょうか。
FEMAはその名のごとく連邦政府の危機管理部局であり、
災害時には郡や市行政とともに応急対応、復旧復興活動を行います。
ではもっと身近な規模、町内レベルではどうでしょう。
Community Emergency Response Team (CERT) を
聞いたことがあるでしょうか。
2012年頃から始まったCERTは
約24時間のトレーニングを受ければ、
誰でもメンバーになれる地域ボランティア危機管理組織です。
CERTは地域で異常事態
(自然災害だけではなく銃乱射やテロなどの多数の死傷者が発生する事象)が発生した際、
参集が呼びかけられます。
もちろん、CERTメンバーは消防隊や警察と違い、
あくまでもボランティアの範疇ですので、
プロのFirst Respondersのサポートといった位置づけになります。
私もこの春CERTのトレーニングを受け資格を取得しました。
トレーニングは通常各郡で実施されますが、
スケジュールの関係で、
私はヒルスボロウ郡及びマナティー郡の両方に参加しました。
マナティー郡は2年前のハリケーン・イルマでも被害があったことから
多くの市民が参加していましたが、
残念ながらヒルスボロウ郡は数名の参加に留まっていました。
全米でもまだCERTの浸透率は低く認知度も高くないのが現状です。
地域の防災促進がFEMAの今後の目標にもなっていますが、
地域住民で守るという考え方がこれからどれだけ浸透していくか?が、
本質的な課題となるでしょう。
水や食料の確保が必要だと言われています。
しかしながら近年では、
もうひとつ進んだ準備の必要性が指摘されています。
それは避難のその後、災害からの復旧・復興の事前検討です。
万が一台風で家屋を
失った時にどのような状況になるのか、保険に加入をしていてもその調査及び支払いには長期間を要するため、
その間どこに住むのか、
保険の支払い適用が可能だとしても、
州や郡の建築基準が変わり、
再建に必要な資金は足りなくなるのでは、
いつから家を建てることが出来るのか、
そもそも同じ場所に住まい続けるのか、
これら重要な判断が求められますが、
必要な情報(保険適用や再建の法的可否)がいつ届くかも分かりません。
お子さんがいる家庭では、
小学校の閉鎖等で勉学に支障をきたすため、
疎開や引っ越しをする家庭も多くなります。
実際昨年10月にフロリダ西部を襲ったハリケーン・マイケル被災地では
小学生が減ったことから閉鎖した小学校もあります。
でも、残念ながら、前号でも述べたように、
自然災害の増加激甚化は事実です。
仮設住宅での環境変化による体調悪化、
復興住宅での孤独死、先の見えない住宅再建。
インフルエンザや疾病に対しては予防接種をするのに
自然災害は全て運に任せて良いのでしょうか。
できる事前策として、万が一の時にどこに逃げ、
どこに住まうのかを家族で話をする機会を設けてもいいのではと思います。
とても被災者たちが明るいことに気がつきました。
一番の違いは、人を失わないこと、人が死なないことが、
明るい復興にあると指摘しています。
阪神大震災で私が失ったクラスメイトは、
「はるかのひまわり」となって、世界に広がっています。
生き残った責任があるとすれば、
それを可能な限り全うし、
次なる災害の被害を減らすことが責任なのではと思います。
http://117kibounoakari.sakura.ne.jp/newpage/?page_id=175
投稿: 大津山堅介さん (京都大学防災研究所 博士後期課程)